「インタビューしたら、みんな『いいですね』って言ってくれたのに、全く売れない」──こんな経験はありませんか?
その原因は、インタビューの目的を間違えていることにあります。インタビューは「共感を集める場」ではなく、「仮説が成り立つか確認する」です。
本記事では、仮説検証型インタビューの設計方法を、事前準備から質問設計、録り方・要約テンプレートまで完全解説します。
インタビューで「いい話」だけ集まる罠
多くの起業家が陥る罠があります。
- 「この機能、便利ですか?」 → 「便利ですね」
- 「買いたいですか?」 → 「検討します」
- 「競合より良いですか?」 → 「良いと思います」
これらは全て社交辞令です。インタビュイーは「否定して嫌な空気にしたくない」と思い、当たり障りのない回答をします。

インタビューの真の目的
インタビューの目的は、仮説の成立条件を確認することです。
- ❌ 共感を集める
- ❌ 良い話を聞く
- ❌ アイデアを褒めてもらう
- ✅ 仮説を検証するために、本音を引き出す、購買行動を理解する
仮説を検証するための質問設計
1. 事前仮説の作り方
インタビュー前に、検証したい仮説を明文化します。
仮説テンプレート:
【ターゲット】は、【課題】があり、
【既存の代替手段】では満足できず、
【価格】で【頻度】購入する意思がある。
例:
BtoB営業マネージャーは、商談データの分析に月20時間かかっており、
手作業のExcel集計では属人化が解消できず、
月額5万円で継続利用する意思がある。
2. 誘導質問を避ける型

| ❌ 誘導質問 | ✅ 良い質問 |
|---|---|
| この機能は便利ですか? | 今どうやっていますか? |
| 買いたいですか? | 過去に似た製品を検討したことはありますか? |
| 競合より良いですか? | 現在の方法で困っていることは何ですか? |
ポイント:
- 過去の行動を聞く(未来の意思ではなく)
- 「どう思いますか?」ではなく「何をしましたか?」
- Yes/No質問ではなく、オープンエンド質問
購買行動を聞き切る5ステップ

ステップ1: 課題確認
「今、この作業をどうやっていますか?」
- 現状のプロセスを具体的に聞く
- 誰が、いつ、どれくらいの頻度で行っているか
- どこに時間がかかっているか
例:
Q: 商談後のフォローアップはどうやっていますか?
A: 商談後にSalesforceにメモを書いて、週次会議で共有しています。
だいたい1件あたり10分くらいかかります。
ステップ2: 現状プロセス
「その方法で、困っていることはありますか?」
- 具体的な痛みを聞く
- 頻度、コスト、影響を数値化する
- 誰が一番困っているか
例:
Q: その方法で困っていることは?
A: メモが属人化して、他のメンバーが見ても分からないんです。
特に新人は過去の商談履歴を追うのに2-3時間かかります。
ステップ3: 代替手段
「過去に他のツールや方法を試しましたか?」
- 過去の行動を聞く(購買意欲の指標)
- なぜ導入したか、なぜ辞めたか
- 競合理解にもつながる
例:
Q: 他のツールを試したことは?
A: 1年前にZendeskを導入しましたが、営業向けではなく使いにくくて辞めました。
月額5万円払っていましたが、誰も使わなくて...
ステップ4: 失敗コスト
「この問題を放置すると、どうなりますか?」
- 放置した場合の損失を聞く
- 緊急性を判断する指標
- 具体的な金額・工数を引き出す
例:
Q: この問題を放置すると?
A: 新人の立ち上がりが遅くて、半年で1人辞めました。
採用コスト100万円と育成工数を考えると、大きな損失です。
ステップ5: 決裁プロセス
「もし導入するなら、誰の承認が必要ですか?」
- 意思決定プロセスを理解
- キーパーソンを特定
- 稟議の難易度を把握
例:
Q: 導入するなら誰の承認が必要ですか?
A: 年間60万円以下なら私の裁量で決められます。
それ以上だと、営業部長の承認が必要です。
インタビュー対象の分け方

全員に同じ質問をするのではなく、対象を4つに分けて設計します。
| 分類 | 優先度 | 質問の目的 |
|---|---|---|
| 想定見込み顧客 | ★★★ | 購買行動、痛み、予算、決裁プロセス |
| 有識者・同業者 | ★★☆ | 業界の常識、既存ソリューション、落とし穴 |
| 潜在顧客 | ★☆☆ | 課題の広がり、認知度、訴求軸 |
| 一般ユーザー | ☆☆☆ | 市場全体の理解(優先度低) |
ポイント:
- 想定見込み顧客に最も時間をかける
- 有識者は業界の「地雷」を教えてくれる
- 一般ユーザーは「いい話」しか出ないので注意
録り方と要約のテンプレート
録音・文字起こし
推奨ツール:
- Zoom録画(自動文字起こし機能あり)
- Otter.ai(精度高い)
- Google Meetの自動文字起こし
ルール:
- 必ず録音許可を取る
- 2人体制(1人質問、1人メモ)
- 録音に頼らず、その場でメモを取る
要約テンプレート
インタビュー後、以下の形式で要約します。
## インタビュー要約
### 基本情報
- 日時: 2025-01-18
- 対象: BtoB営業マネージャー(社員数50名)
- 分類: 想定見込み顧客
### 現状プロセス
- 商談後にSalesforceにメモ(1件10分)
- 週次会議で共有
- 新人は過去履歴の把握に2-3時間
### 課題・痛み
- メモが属人化、新人が理解できない
- 過去の商談履歴を追うのに時間がかかる
- 新人の立ち上がりが遅く、半年で1人退職
### 代替手段
- Zendeskを1年前に導入(月額5万円)
- 営業向けではなく、誰も使わず解約
### 失敗コスト
- 新人1人退職(採用・育成コスト100万円)
### 決裁プロセス
- 年間60万円以下は本人裁量
- それ以上は営業部長承認
### 仮説検証結果
- ✅ 課題は存在する
- ✅ 過去に予算を使っている(購買意欲あり)
- ✅ 失敗コストが具体的(緊急性あり)
- ❌ 年間60万円が上限(想定価格と合わない)
### 次のアクション
- 価格を月額3万円に下げて再提案
- 営業部長にもヒアリング
FAQ
Q1. インタビューは何人やればいいですか?
A. 10-20人が目安です。5人目くらいから同じパターンが見えてきます。20人やっても新しい学びがなければ十分です。
Q2. インタビュイーはどうやって見つけますか?
A. 以下の方法があります。
- LinkedInで直接メッセージ
- 知人の紹介
- イベント・勉強会での声がけ
- TwitterでDM
Q3. インタビューの謝礼はいくらですか?
A. BtoBなら3,000-5,000円のAmazonギフト券が一般的。有識者には10,000円も。
Q4. オンラインとオフライン、どちらが良いですか?
A. オンラインで十分です。録画・文字起こしがしやすく、効率的です。
Q5. インタビューで「買いたい」と言われたらどうしますか?
A. 「本当に買う気があるか」を確認するため、「いつまでに導入したいですか?」「予算はついていますか?」と深掘りしてください。
まとめ
インタビューは「共感を集める場」ではなく、「仮説を検証する場」です。
- 事前に仮説を明文化する
- 誘導質問を避け、過去の行動を聞く
- 購買行動(課題→プロセス→代替→コスト→決裁)を聞き切る
- 対象を分けて、想定見込み顧客に集中する
「いいね」という言葉ではなく、「過去に予算を使った行動」を探す。 それが次のテストマーケやPoCに直結します。
Sources
- 9 Tips for Better Customer Validation Interviews | ProductPlan
- The Iterative-Hypothesis customer development method | A Smart Bear
- How to validate customer hypotheses | Pioneers
- How to Design Your Customer Validation to Maximize Product/Market Fit | Sachin Rekhi
- How to Use Interview Data to Validate Product Hypotheses | Insight7
この記事を書いた人
yap編集室
株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。


