メッセージが刺さらない:コンセプトと言い方を作り直すために
「機能は揃っているのに、なぜか響かない」「競合と同じようなことを言っている気がする」。メッセージングの課題を抱えるB2B SaaSチームは多いです。
この記事でわかること
- なぜメッセージが刺さらないのか: 機能羅列型の落とし穴と顧客視点の欠如
- メッセージングの階層構造: ポジショニング→バリュープロポジション→キーメッセージ
- 作り直しの実践ステップ: 現状分析から検証までの4ステップ
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カテゴリ | GTM戦略 |
| 難易度 | 中級 |
| 想定読了時間 | 10分 |

なぜメッセージが刺さらないのか
機能羅列型の落とし穴
多くのB2B SaaSが陥るのが「○○ができます」「△△機能搭載」という機能羅列型のメッセージです。
機能羅列型の例:
- 「AIによる自動分析機能」
- 「リアルタイムダッシュボード」
- 「Slack・Salesforce連携」
これらは製品の「What」を伝えていますが、顧客が知りたいのは「So What?(だから何?)」です。
顧客視点の欠如
自社製品に詳しくなるほど、顧客の視点を忘れがちです。社内では当たり前の言葉が、顧客には伝わらないことがあります。
| 社内の言葉 | 顧客の課題 |
|---|---|
| AIによる自動分析 | 毎週5時間かかるレポート作成をなくしたい |
| リアルタイムダッシュボード | 経営会議の直前に数字を集める苦労をなくしたい |
| Slack連携 | ツールが増えすぎて情報が分散している |
競合との差別化ができていない
「クラウドベース」「使いやすいUI」「充実したサポート」は、多くの競合も訴求しています。顧客から見ると「どれも同じに見える」状態です。

メッセージングの階層構造を理解する
メッセージングには4つの階層があります。上から下へ、抽象から具体へと落とし込みます。
1. ポジショニングステートメント
市場における自社の立ち位置を定義します。「誰に・何を・なぜ自社か」を1段落で表現します。
2. バリュープロポジション
顧客に提供する価値を明確にします。「なぜ競合ではなく自社を選ぶべきか」の答えです。
良いバリュープロポジション:
- 顧客の課題に直結している
- 競合との違いが明確
- 検証可能(数字で示せる)
3. キーメッセージ
バリュープロポジションを支える3-5個のメッセージです。各メッセージが1つのベネフィットを伝えます。
4. コピー・表現
LP、営業資料、広告などで使う具体的な言葉です。キーメッセージを文脈に合わせて表現します。
作り直しの4ステップ

Step 1: 現状を分析する
まず、現在のメッセージングを棚卸しします。
確認項目:
- LP・営業資料で使っている主要なメッセージ
- 顧客が「なぜ導入したか」を説明するときの言葉
- 競合が使っているメッセージ
インタビューで聞く質問:
- 「導入前、何に困っていましたか?」
- 「他社と比較したとき、決め手は何でしたか?」
- 「導入後、何が変わりましたか?」
Step 2: 競合との違いを明確化する
競合分析から、自社の独自性を抽出します。
| 比較軸 | 自社 | 競合A | 競合B |
|---|---|---|---|
| ターゲット | SMB | エンタープライズ | 全般 |
| 強み | 導入の速さ | 機能の深さ | 価格 |
| 弱み | 大規模対応 | 導入期間 | サポート |
この分析から「自社だけが言えること」を特定します。
Step 3: 顧客視点で再構成する
機能ではなく、顧客のベネフィットを中心に再構成します。
機能 → ベネフィット 変換表:
| 機能 | ベネフィット |
|---|---|
| AIによる自動分析 | 週5時間のレポート作成がゼロに |
| リアルタイムダッシュボード | 経営会議の準備が5分で完了 |
| Slack連携 | いつものツールから離れずに使える |
Why/Howラダーを活用します。
- Why(上へ): 「なぜそれが重要か?」を繰り返し、本質的な価値に到達
- How(下へ): 「どう実現するか?」を繰り返し、具体的な差別化要因に到達
Step 4: テスト・検証する
作成したメッセージを実際にテストします。
テスト方法:
- A/Bテスト: LP・広告でクリック率を比較
- 営業トーク: 商談での反応を観察
- ユーザーインタビュー: 「このメッセージを見てどう思うか」を聞く
評価指標:
- 理解度: メッセージを正しく理解できたか
- 関心度: 「もっと知りたい」と思ったか
- 差別化: 競合との違いが伝わったか
バリュープロポジションのテンプレート
基本テンプレート
[ターゲット顧客]のための[プロダクト名]。
[主要な課題]を解決し、
[定量的なベネフィット]を実現。
[競合・代替手段]と異なり、
[独自の強み]で選ばれています。
例: 営業分析ツール
成長中のB2B SaaS営業チームのためのABC分析ツール。
商談の振り返りに時間がかかる課題を解決し、
週5時間の工数削減と受注率15%向上を実現。
手動の議事録作成と異なり、
AIが自動で重要ポイントを抽出・サマリー化。
実践チェックリスト
- 現在のメッセージを棚卸しした
- 顧客インタビューを3件以上実施した
- 競合との差別化ポイントを特定した
- 機能→ベネフィットの変換表を作成した
- バリュープロポジションを1段落で書いた
- A/Bテストまたは顧客フィードバックで検証した
よくある質問(FAQ)
Q1. メッセージは何パターン用意すべきですか?
ターゲットセグメントごとに1パターンが基本です。異なる課題を持つセグメントには、異なるメッセージが必要です。
Q2. 数字(定量的ベネフィット)がない場合はどうしますか?
顧客事例から「〇〇%改善」などの数字を収集します。事例がない初期段階では、「期待される効果」として仮説を提示し、「実績が出次第更新」とします。
Q3. 競合と機能が似ている場合、どう差別化しますか?
機能以外の差別化軸を探します。
- ターゲットの絞り込み: 特定業界・規模に特化
- 体験の違い: 導入の速さ・サポートの質
- ビジネスモデル: 価格体系・契約形態
Q4. メッセージの効果測定はどうすればいいですか?
短期指標と長期指標の両方を見ます。
- 短期: LPのCVR、広告のCTR、商談化率
- 長期: ブランド認知度、指名検索数、NPS
Q5. 社内でメッセージの合意が取れません。どうすればいいですか?
「好み」ではなく「データ」で判断します。複数案を用意し、A/Bテストで結果を比較します。また、最終決定者を明確にし、議論が長引かないようにします。
まとめ
主要ポイント
- 機能羅列から脱却する: 「○○ができます」ではなく「○○の悩みを解消」
- 階層構造を意識する: ポジショニング→バリュープロポジション→キーメッセージ→コピー
- 検証を忘れない: 作って終わりではなく、テストして改善
次のステップ
- 顧客インタビュー3件を実施する
- 機能→ベネフィット変換表を作成する
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参考リソース
本記事はyap(ヤップ)のB2B SaaS GTMシリーズの一部です。
この記事を書いた人
yap編集室
株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。


