STPとポジショニングで揉めるとき:議論を前に進める整理のしかた
「うちのポジショニングって結局何なの?」「この市場セグメントで本当にいいの?」。STP分析で議論が堂々巡りになるチームは多いです。
この記事でわかること
- なぜSTP分析で揉めるのか: 正解を探そうとする姿勢と曖昧な判断基準
- 前に進めるための整理方法: S→T→Pの順番にこだわらない実践的アプローチ
- ポジショニングマップの使い方: 競合との差別化を可視化する方法
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カテゴリ | GTM戦略 |
| 難易度 | 中級 |
| 想定読了時間 | 10分 |

なぜSTP分析で揉めるのか
「正解」を探そうとしている
STP分析に唯一の正解はありません。しかし、チームは「完璧なセグメンテーション」や「最適なポジショニング」を見つけようとして、議論が終わらなくなります。
判断基準が曖昧
「この軸でセグメントを切るべきか」「このポジションは空いているのか」といった問いに、明確な基準がないまま議論すると、各メンバーの主観がぶつかります。
S→T→Pの順番に囚われている
教科書的には「まずセグメンテーション、次にターゲティング、最後にポジショニング」ですが、実務では3つを行き来しながら磨いていく方が効果的です。

STP分析の基本を押さえる
Segmentation(セグメンテーション)
市場を複数のグループに分割する作業です。B2B SaaSでは以下の軸がよく使われます。
| 軸 | 例 |
|---|---|
| 業界 | SaaS・製造・小売・金融 |
| 企業規模 | SMB・ミッドマーケット・エンタープライズ |
| 地域 | 国内・APAC・グローバル |
| 課題タイプ | コスト削減・売上向上・リスク管理 |
| 技術成熟度 | クラウドネイティブ・ハイブリッド・オンプレミス中心 |
Targeting(ターゲティング)
分割したセグメントの中から、注力する対象を選ぶ作業です。選択には3つのアプローチがあります。
- 集中型: 1つのセグメントに絞り込む
- 差別型: 複数セグメントに異なるアプローチ
- 無差別型: 全セグメントに同一アプローチ
スタートアップの初期段階では、集中型が推奨されます。
Positioning(ポジショニング)
選んだターゲット市場で、競合とどう差別化するかを決める作業です。「なぜ競合ではなく自社を選ぶのか」を明確にします。
議論を前に進める3つの方法
方法1: 仮説で始めて検証で磨く
完璧な分析を目指すのではなく、「とりあえずの仮説」で動き始めます。
- 仮説を立てる: 「このセグメントがよさそう」
- 試す: 実際に営業・マーケティングを行う
- 検証する: 結果データを分析する
- 修正する: 仮説を更新する
このサイクルを2-4週間で回すことで、議論だけの時間を減らします。
方法2: 順番にこだわらない
S→T→Pの順番は必須ではありません。実務では以下のパターンもあります。
| パターン | 説明 |
|---|---|
| P→T→S | 競合との差別化ポイントから逆算してターゲットを決める |
| T→S→P | 既存顧客の特徴からセグメントを再定義する |
| 並行検討 | 3つを同時に検討し、整合性を取る |
方法3: 判断基準を明文化する
議論の前に「何をもってよしとするか」を決めます。
- 市場規模: TAMが○億円以上
- 成長率: 年率○%以上
- 競合状況: 競合が○社以下、または明確な差別化が可能
- アクセス性: ○○チャネルでリーチ可能
ポジショニングマップの実践
2軸で整理する

ポジショニングマップは、2つの軸で市場を整理するツールです。
軸の選び方
顧客が購買判断で重視する要素を軸にします。
| 業界 | よく使われる軸 |
|---|---|
| SaaS全般 | 価格↔機能、使いやすさ↔カスタマイズ性 |
| 営業ツール | 自動化度↔人的サポート、SMB向け↔エンタープライズ向け |
| 分析ツール | リアルタイム性↔深さ、セルフサービス↔フルサポート |
空白を探す
マップ上に競合をプロットし、空白地帯を探します。ただし、空白には理由がある場合もあります。
- 魅力的な空白: 顧客ニーズがあるが、競合が気づいていない
- 意味のない空白: 顧客ニーズがない、または事業として成立しない
空白を見つけたら、「なぜ空いているのか」を検証します。
ポジショニングステートメントの書き方
テンプレート
[ターゲット顧客]にとって、
[プロダクト名]は[カテゴリ]であり、
[主要な差別化ポイント]を提供します。
[競合・代替手段]とは異なり、
[独自の価値]を実現します。
例
急成長するB2B SaaS企業の営業チームにとって、
ABCツールは営業分析プラットフォームであり、
商談録音からの自動インサイト抽出を提供します。
手動での議事録作成とは異なり、
営業担当者の時間を週5時間削減しながら、
コーチング精度を向上させます。
実践チェックリスト
- セグメンテーションの軸を3つ以内に絞った
- ターゲットセグメントを1つに決めた(初期段階)
- ポジショニングマップを作成し、空白を確認した
- ポジショニングステートメントを1段落で書いた
- チームで合意形成した
よくある質問(FAQ)
Q1. セグメントの切り方に正解はありますか?
正解はありません。重要なのは「顧客の購買行動が異なるか」です。同じ行動をするグループを同一セグメントにします。
Q2. ポジショニングは変えてもいいですか?
市場環境や競合状況の変化に応じて、更新が必要です。ただし、頻繁な変更はブランド認知を損なうため、慎重に行います。
Q3. 競合が多い市場でどう差別化しますか?
機能での差別化が難しい場合、以下を検討します。
- 特定ユースケースへの特化
- サービス・サポートでの差別化
- 価格モデルの工夫
Q4. STPと4Pの関係は?
STPが「誰に・何を」を決め、4P(Product・Price・Place・Promotion)が「どう届けるか」を決めます。STPが上流、4Pが下流です。
Q5. 社内で意見が割れたらどうしますか?
判断基準を明文化し、データで検証できる形にします。「好み」ではなく「事実」で議論を進めます。意見が割れた場合は、小規模なテストで検証します。
まとめ
主要ポイント
- 完璧を求めない: 仮説で始めて検証で磨くアプローチが有効
- 順番にこだわらない: S→T→Pの順序は必須ではない
- 判断基準を明文化する: 主観のぶつかり合いを避ける
次のステップ
- ポジショニングマップを作成し、競合をプロットする
- ポジショニングステートメントの初稿を書く
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参考リソース
本記事はyap(ヤップ)のB2B SaaS GTMシリーズの一部です。
この記事を書いた人
yap編集室
株式会社yapの新規事業開発コンサルタントたちによる編集チームです。新規事業の仮説検証・PMF設計、営業推進に関する知見を、さまざまなプロジェクト支援の経験をもとに発信しています。


